悲しいとき、悔しいとき、映画で感動したとき。そういう涙ではない、「カッコよすぎて涙が止まらねぇ」というやつ。
ああ、すごいわ。こんなに心って、動くんだ。燃えるんだ。高まるんだ。こんな快楽がこの世には存在するんだ。『タイタニック』観たときより、すごいかもしれない。ああ、おれ、こういうことに生きよう。おれの心をこんなに動かしてくれたように、誰かの心を動かして、火を着けて、エネルギーを胸に残すような快楽を、宝物を、おれもつくりたい。
最終曲『RUN』が終わり、B’zの2人とサポートメンバーを美しいシルエットにする1,500発の花火を眺める頃、僕はこう心に誓っていました。
2018/9/23(SUN) 19:59
B’zのように心に火をつけるような瞬間を作り出したいと、ねがいながら生きてきました。
14歳で初めてつくった映画のエンディングテーマは『さまよえる蒼い弾丸』だったし、就活のとき気合を入れるために聴いていたのは『ALL-OUT ATTACK』だったし、なにより『RED』が全編に流れるTVCMの監督をすることもできました。自分の結婚式の退場曲はもちろん『RUN』でした。
僕が10歳のとき出会ったB’zは、
僕が33歳になってもまだ、全力でやっていました。
B’z LIVE-GYM Pleasure 2018 “HINOTORI”を味スタで堪能した2日後、2018年9月23日(日)19時59分─僕はシネマート新宿という映画館の、客席ではなく、ステージの側に立っていました。
念願のオリジナル短編映画『東京彗星』をこの日、映画館で上映しました。一緒に映画をつくった仲間たちとおこなった舞台挨拶は、B’zの音楽や創作への姿勢に力をもらいながらたどり着いた、言わばLIVE-GYMのようなものでした。
それから、もうすぐ3年。
計画では『東京彗星』のあとハリウッドから呼ばれて、今頃はなんか超大作を撮っているつもりだったのですが、まぁ、そううまくはいきません。
が、やめてもいません。その後も何本か、オリジナル短編映画をつくる機会をいただいています。
やめない。僕が日々映像体験をつくることをやめないでいられるのは、だってB’zがやめないから。
20周年のときの曲『いつかまたここで』の中に “うまくいかなくても やめない”という歌詞があります。
鼓舞するような派手な言葉ではなく、シンプルだけど、とても根本的で大事なことだと思います。
そして何より、B’zのお2人が実践していることだと思います。
自分の中にある衝動を吐き出すようにつくる創作には、いずれ燃料が尽きる時が訪れます。
B’zはあるときから、もしかしたら最初から、そうではないように思います。
松本さんの「いいアルバムをつくり、いいツアーをやる。それ以外にない」という言葉の通り、まず快楽(Pleasure)の“生産”という行為が、先にある。
とにかく生産しつづけるという意思と決意、そして実践が、
松本さんにはあらゆる音を、
稲葉さんにはあらゆる心の機微や言葉を、
自分の外の世界から引き寄せる。
そしてB’zの2人というBIG MACHINEの中で結合された言葉と音が、
爆炎のような楽曲やLIVE-GYMとなって、世界にまた吐き出されていく。
内面の衝動を燃やし尽くし、輝いて散る“花火”ではなく。
適切に設計された“燃焼機関”であるからこそ、
長く、止まらずに走り続けることができる。
B’zには、90年代ですら意外にも、シングル年間1位の楽曲はありません。
一世を風靡まではしないかわりに、下火になることもない。
続けることのすごさは、続けるほど際立ちます。
2020年にして、苦難を逆手にとって5週連続個別セトリ配信ライブという挑戦をぶっ放してくれました。
「うまくいかなくても、やめない」
B’zがやめてないのに、やめるわけにはいかない。そう思います。
2021/4/XX(XXX)19:59
もうちょっと、あとちょっと、やってみましょうよ。やらせてくださいよ。
稲葉さんはMCでよく、こういうことを言います。
もうちょっとで、何かに届きそうな気がする。
何かが起こりそうな気がする。だから、もうちょっとだけ。
そろそろ夢が叶う?いやいや叶わない。
B’zのケースに入れたスマホで、B’zを流しながら、今日も。
幼い僕や若い僕を奮い立たせてくれたようなエネルギーを、自分もまた生み出せるように、冗談を飛ばしながら荒野を走ろうと思っています。
ゴールはここじゃない。まだ終わりじゃない。
プロフィール
洞内 広樹(ほらない ひろき)
映画監督/映像ディレクター
1985年5月4日生まれ。
B’zとジェームズ・キャメロンをこよなく愛する。
『東京彗星』(2017)
( https://vimeo.com/229440919 )
『LAST GIRL STANDING』(2018)
( https://www.youtube.com/watch?v=Po9B-h8DTNo )
『GHOSTING』(2019)
(http://sonoshunkan.toeiad.co.jp/index.html )
『MASKAHOLIC』(2020)
(https://www.youtube.com/watch?v=a9DiJBUyj7Y )
Twitter: https://twitter.com/hirockyhorahora
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