ギター・松本孝弘、ヴォーカル・稲葉浩志からなる二人組のロックユニット「B’z」。
彼らのユニット名(バンド名)のイントネーション(発音)は、冒頭の「び」にアクセントを置いた『起伏式』のものなのか、それとも全体的に抑揚を付けない『平板式』のものなのだろうか。筆者が”B’zの読み方”をまとめた。
B’zのイントネーションは冒頭の「び」にアクセントを置く『起伏式』が正しい
まず結論を述べる。「B’z」のイントネーション・抑揚は、冒頭の「び」にアクセントを置く『起伏式』が正しい。(「ビール」や「チーズ」などと同じ抑揚。)
実はB’zの松本・稲葉ら本人やスタッフ、マネジメントサイドは、1988年のデビュー当時から一貫して“ビィズ”といったような『起伏式』の読み方をしていた。(他方でサポートメンバーの明石昌夫やプロデューサーなどは、現在も“ビ→ーズ”といった『平板式』の読み方をしているため、制作メンバー全員が『起伏式』の読み方をしているわけではない。)
それではなぜ、世間では、抑揚を付けない『平板式』の読み方も浸透しているのだろうか?以下『起伏式』の発音を『ビィズ』、『平板式』の発音を『ビ→ーズ』と表記し、考察する。
原因は大衆による読み方の平板化と司会・古舘伊知郎とのやり取りミスか
その原因は、諸説ある。しかしまず第一に挙げられるのは、既に世間一般でも論じられているように、言語学の観点によるものだろう。
日本語では、単語が世の中に浸透していくにつれ前に置かれていたアクセントが後ろに置かれる、いわゆる“平板化”という現象がしばしば起こる。(例:「彼氏」「映画」など)
さらに、とりわけ外来語では、話者がその分野に精通している印となる”専門家アクセント”と呼ばれる現象が、起こることもあるというのだ。例えば「バイク」「ビデオ」「ギター」などを平板化させて読むと、確かに“通っぽい”ニュアンスが生まれることが、ご理解いただけるだろう。
このように日本語の特質が「B’z」の読み方に影響を与えた可能性は、極めて高い。
だがしかし、原因はそれだけではなく、「B’z」のイントネーションが世間にうまく伝わっていなかった(実際にはメンバーが世の中に対し自由に呼んでほしいと思っていた)ことにもあるだろう。
その一例とも言える、この発音の問題を左右する重大な出来事が、B’zがデビュー初期に出演した1989年12月15日放送のフジテレビ系音楽番組『夜のヒットスタジオR&N』で起こっていた。
同番組で、「BAD COMMUNICATION」の演奏を終えた松本・稲葉らに対し、司会の古舘伊知郎は「俺なんかの年代だとね、『ビィズ』って言っちゃう。イントネーションが。やっぱり今は平板化するから、若い子なんか『ビ→ーズ』とか。」と鋭く指摘。そして同じく司会のGWINKOが「本当はどうなんですか?」と問うと、稲葉は「僕たちは『ビィズ』って言ってますけど。」と返答し、そして松本孝弘も、「そうですね。」と頷いた。
これにて一件落着と思いきや、古舘は直後に、「平板化の方向で。」とコメント。稲葉の返答する声が小さかったことが原因かと思われるが、なんとここで、両者の間に発音に対する認識の齟齬が発生してしまった。ところがこの誤りは訂正されずに、番組は終了してしまったのだ。
このやり取りが原因で、多くの視聴者や業界人に誤った認識が伝播してしまった可能性も、十分にあるはずだ。自身二度目の全国ネット出演となったこの時、もし世の中に対して正しい発音を明確に説明できていればー『起伏式』の発音をする人の数も、現状よりは増えていたかもしれない。なおその3年後、1992年10月28日放送のフジテレビ系『MJ -MUSIC JOURNAL-』でも古舘はB’zに対し「B’z」のイントネーションを質問したが、この時松本は、自分たちは『ビィズ』と呼んでいるが好きなように呼んでほしい、という主旨の返答をしている。
ただ一方で、稲葉・松本らがデビュー当時から「B’z」の発音の仕方に拘っていなかったことが、お分かりいただけるだろう。
B’zの本人らは「B’z」をどう読んでほしいと思っている?
それでは改めて、B’zの松本・稲葉ら本人たちはユニット名の読み方についてどう思っているのだろうか?
2012年12月9日にWOWOWで放送された「B’z 25th Anniversary Special 全米ツアー密着ドキュメント『Only Two』」では、ディレクターが「B’z」の発音について質問。この時松本は、「僕らはそう言ってますけど世間は皆『ビ→ーズ』って言ってますよね。特にこだわりはないよね。僕ら今まで普通に『ビィズ』って言ってきただけで。だから世間というか皆さんファンの方なんかでも『ビ→ーズ』って言っていただいても全然問題ないし。」とコメントした。
上記の発言を鑑みても改めて、本人たちは昔から、”自身らは『ビィズ』と呼んでいるが、ファンや世間の人々が『ビ→ーズ』と言っていても問題ない”という姿勢を貫いていることが分かる。
しかしながら一方で、2017年〜2018年開催の全国ツアー『B’z LIVE-GYM 2017-2018 “LIVE DINOSAUR”』の一部公演では、新しい向きも見られた。MCの場面で、スクリーンに登場したバーチャルの恐竜がユニット名を『ビ→ーズ』と発音して稲葉がこれを『ビィズ』と訂正する、といった演出が行われたのである。
但しこれは、世間で「B’z」の発音の論争が頻繁に起こるようになってきているのを稲葉らが認識した上で敢えてネタにしたものだと見ることができるだろう。
【アンケート】B’zのファンは「B’z」をどう読んでいるのか?
それでは最後に、B’zのファンは「B’z」をどう読んでいるのだろうか?この点を、当サイトのTwitterアカウントでファンの皆さんに質問した。(n=1444、2020年10月実施。)
その結果、約56.9%の人が、「B’z」を平板式のアクセントで『ビ→ーズ』と呼ぶ、と回答した。
つまり、過半数のファンが正確ではない読み方をしている、ということである。
近年テレビ番組では、バラエティ的な要素で「B’z」の発音を『ビ→ーズ』から『ビィズ』へと訂正する場面が数多く見られる。しかし一方で実際には、メンバー・ファン共々に、あまり正確な発音を気にしていないのかもしれない。
さて、ここまでの話を要約すると、「B’z」の正しいイントネーション・発音は起伏先の『ビィズ』だが、本人たちは好きなように呼んでほしいと思っており、また一定数のファンも平板式の『ビ→ーズ』と呼んでいる、ということになる。
日常生活で「B’z」の発音の正誤が友人・知人と議論になった際に是非、上記のこれらの知識を役立ててほしい。
コメント