B’zが1995年にリリースしたヒットシングル曲のタイトルである「LOVE PHANTOM」というワードが、B’zの全楽曲の音楽ストリーミングサービスによるサブスクリプション配信の解禁が行われた21日、Twitterのトレンド入りを果たした。ユーザーからの各投稿では、同曲のイントロの長さに触れる内容が多く見られた。
さて一般的に、近年のポピュラー音楽業界では、発表される楽曲の「イントロ」が極めて短くなっていると言われている。なぜなら、音楽ストリーミング・音楽サブスクリプションサービスの時代が到来したからだ。あるアメリカの研究によると、ビルボードチャートTOP10に入った曲を分析した結果、1980年代の楽曲のイントロの長さは約20秒であったのに対し、2010年代(~2015年)のものは約5秒になっていたという。
サブスクでは「離脱されない」ことが重要視 楽曲使用料の支払いなどが要因か
そしてSpotifyによるデータは手厳しい。ユーザーは楽曲を1時間に「14.65回」もスキップするといい、またあるアメリカの分析者の調査によると、楽曲を5秒未満でスキップするユーザーが約24.1%で、楽曲を最後までスキップしないユーザーは、約51.4%程度に留まるという。(2014年)
さらにここで問題になってくるのが、「楽曲使用料の支払い」、つまりアーティスト側への報酬についてである。音楽サブスクリプション(定額制)サービスでは一般的に、ユーザーが楽曲を数十秒(約30秒とも言われている)再生することで初めて「楽曲が再生された」とみなされ、「楽曲使用料」が発生すると言われているのだ。
となると、”サブスク全盛”の時代でコンポーザーがリスナーの”離脱”を防ぎたくなるのも無理はない。無論ミュージシャンにとってこの尺度が全てではない上、今後報酬支払いの仕組みや音楽トレンド自体の変化が起こることも十分に考えられるだろう。しかしながら、とりわけ2010年代にポピュラー音楽界で「イントロ短縮」現象が起こっていたこと自体は、紛れもない事実のようだ。
日本でも…「白日」「Lemon」「夜に駆ける」「紅蓮華」…イントロなしの曲多数
ここで日本の音楽市場に目を向けてみよう。King Gnu「白日」(2019)、米津玄師「Lemon」(2018)、YOASOBI「夜に駆ける」(2019)、LiSA「紅蓮華」(2019)など…近年のヒットソングに、イントロが短いどころか”イントロなし”の楽曲が多数見られるということが、お分かりいただけるのではないだろうか。
もちろん、”イントロの長さが従来通りのヒット曲”も存在している。あいみょん「マリーゴールド」(2018)のイントロは約20秒以上、Official髭男dism「Pretender」(2019)のイントロは約30秒以上だ。またそもそも今後、音楽トレンドのスイングバックが起き、楽曲のイントロが長くなる時代が再び到来するかもしれない。
しかし一方で、B’z「LOVE PHANTOM」(1995)のイントロの長さは、約1分20秒である。J-POPの歴史を振り返ってみても、これほどまでに壮大なスケールのイントロを伴いかつ圧倒的なセールスを記録した楽曲は、実に少ない。
そんな圧倒的な破壊力を持つ楽曲が、今回のサブスク解禁によって時間軸を超越し、ついにサブスク戦線に姿を現した。
”サブスクで「LOVE PHANTOM」の長いイントロを聴きたい”ー「LOVE PHANTOM」がトレンド入りした当日以降、Twitterではそんな声も多数見られている。音楽の聴き方、そして聴かせ方は、もはや新しいフェーズに突入したのかもしれない。
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