「B’zのヴォーカリスト・稲葉浩志の肺活量は、成人男性の平均の2倍程度の8000ccである。」
皆さんはこのエピソードを、どこかで聞いたことはないだろうか?
実はこれ、真実ではない。いわゆる”デマ”である。
B’z稲葉浩志の肺活量に関するエピソードは、現在、インターネット上に誤ったものが多数掲載されている状況だ。そこで今回は、この記事で、正しい情報を伝えようと思う。
B’z稲葉浩志の肺活量が8000ccというエピソードは間違い 本人曰く「男性平均より少し上くらい」
B’z稲葉浩志の肺活量が成人男性の平均の2倍程度の8000ccであると言われ出したのは、いつ頃からだろうか。確かに稲葉の歌声には驚愕させられることが多く、特に、ライブでのロングトーンや走りながらのブレない歌唱は、ある意味において唯一無二だ。
だがしかし、稲葉本人が自身の肺活量を8000ccと語ったことは、そもそもない。
また、肺活量に関して述べると、プロのスポーツ選手や水泳選手でも5000~6000cc、また特に多い人でも、7000cc程であることが多いようである。
果たしてそんな中で、稲葉の肺活量は8000ccを本当に超えているのだろうか。
結論を言おう。実はこのエピソード、稲葉本人が明確に否定している。
稲葉は2016年のファンクラブ会報誌で、ソロツアーで披露した「遠くまで」でのロングトーンについてインタビュアーに絶賛された際、自身の肺活量について「肺活量(笑) だから僕、8000もないからっ!本当に!(笑) よく8000って言われるんだけど、この年齢(当時51歳)の男性の平均より少し上くらいだから、そんなに変わらない。」とコメント。”肺活量8000ccエピソード”について、明確に否定した。
稲葉浩志の実際の肺活量は、計算したところおよそ約4000cc~4500ccか
それでは仮に、稲葉が言っていることが全て本当だとしたら、実際の稲葉浩志の肺活量はどれくらいあるのだろうか。検証してみよう。
当サイトでは稲葉の年齢、身長(56歳、173cm)を肺活量の計算式(男性:予測肺活量(cc) = (27.63-0.112 × 年齢)× 身長)に当てはめて、平均的な予測値を算出した。
そしてその結果の数値は、3695ccとなった。(2016年当時の計算なら、3792ccとなる。)
よってこの数値を少し上回っていると仮定した場合、B’z稲葉浩志の肺活量は、現在、約4000cc~4500cc程度だと推測するのが妥当ではないだろうか。
それでも稲葉浩志は凄い 筆者から見た場合”ミックスがうまく、少ない息の量で歌えるヴォーカリスト”か
ちなみにたとえ肺活量が成人男性の2倍の量ではないとしても、稲葉浩志というヴォーカリストが凄いことには、一切変わりがない。なぜなら、稲葉は今もなおライブのステージにおいて幅広い音域の発声を駆使し、パワフルかつ安定的な歌声や、鋭いシャウトを、存分に披露しているからである。
さて、ここで私見を述べたいと思う。
長年稲葉の発声を研究してきた筆者が思うに、稲葉浩志は、呼吸の力強さもさることながら、「”ミックス”(ミドルボイス)が上手く、少ない息の量で効率的に発声できるヴォーカリスト」なのではないだろうか。
彼の発声は、主に裏声主体のミドルボイスであり、これを用いることによって、少ない息の量で高音を出し切ることができている。またこの裏声主体のミドルボイスというのは実は相当に難しい歌唱法であり、並外れた技量を必要とするものであるのだが、筆者は特にその中で、稲葉の共鳴腔の使い方、声帯の使い方、息の当て方が、卓越していると考えている。
これらを敢えて言語化するなら、「体内に必要なスペースを空け、必要な声帯の形を作って、そこに最適(効率的な)な息の量を当てるのが上手い」、ということになるのではないだろうか。
よって息の絶対量というよりは、基礎的な呼吸の上に成り立っている種々の技術が優れている、と評することもできるだろう。
また一方で、稲葉が2020年に行われた福山雅治との対談企画で、自身の歌において横隔膜を上げ下げする動きを重要視しており、その鍛錬を「POWERbreathe(パワーブリーズ)」(2008年放送のドキュメンタリー番組でも登場した)と思しき器具で行ったエピソードを改めて語ったことも、付記しておく。稲葉の歌に力強い呼吸が必要なことは、今現在も確かなようだ。
さて、何はともあれ、そもそもヴォーカリストの評価が肺活量でなされること自体がおかしな話である。それは歌声のいかんによってのみ、判断されるべきことであろう。
稲葉浩志というヴォーカリストの凄さを証明するために、わざわざ誤った肺活量の数値を引き合いに出す必要は全くない。そう、彼の圧倒的な歌声を聴きさえすれば、良いのである。
このように、市井に出回っているB’zにまつわるエピソードには、事実に基づかないものも含まれている。「B’z」がBIGなアーティストだからこそのことではあるが、あまりに都市伝説が増幅しすぎるとー”デマだぜ たちのわるい 最近はやっているのは”ーそんな鋭い指摘がどこかから飛んできそうである。情報を扱う時には、くれぐれも”ソース”に気をつけたい。
コメント
いつも楽しく拝読しております。
「『TIME』の歌詞は、横浜・港の見える丘公園をイメージして書かれた」についてですが、
当時のラジオ番組で稲葉さん本人がリスナーからの質問に答える形で
肯定されていた記憶があります。
自分の記憶のみでソースはないのですが…。
こんにちは。こちらこそいつもご覧いただき誠にありがとうございます。
情報のご提供頂き誠にありがとうございます。大変失礼いたしました。
早急に情報収集させていただきたいと思います。
貴重なご意見ありがとうございます。結果わかり次第、反映させていただきます。
引き続き当サイトを何卒よろしくお願い申し上げます。