【コラム】『B’zと万葉集~「平成」から「令和」へ~』 #Bz #平成 #令和 #万葉集

コラム




こんにちは。管理人です。

2019年4月1日(月)11時30分すぎ、首相官邸で菅内閣官房長官が記者会見を行い、
平成に代わる新元号が『令和(れいわ)』に決定したことが発表されました。
これによって正式に2019年5月1日(水・祝)から新しい元号『令和』が施行されることとなります。

さて、今回の改元で注目を集めたのが、『令和』の典拠です。
これまでの元号では全て中国古典(漢籍)が出典とされてきたところ、今回の元号では史上初めて日本の国書が選ばれることになります。
その国書とは「万葉集」です。




「万葉集」とは?

「万葉集」は、7世紀後半から8世紀後半にかけて編まれた日本に現存する最古の和歌集であるとされています。
「万葉集」の大きな特徴は、天皇、貴族、防人、農民など身分や地位を問わず多くの歌人の歌が収められていることです。
また素朴で、ありのままの心情を詠んだ歌が多いのも特徴と言えるでしょう。

ちなみに今回の新元号『令和』には「人々が美しく心を寄せ合う中で文化が生まれ育つという意味が込められている」ということです。

『B’zと万葉集』

それでは、今回のテーマである『B’zと万葉集』にはいったい何の関係があるのでしょうか?

実は、『B’zと万葉集』には、一般的にはあまり知られていない密接な関係がありました。

それは、1990年2月21日発売、3rdシングル「LADY-GO-ROUND」制作時のことです。

稲葉浩志さん、B’zデビュー後作詞に苦しむ

B’zは1988年(昭和63年)9月21日、ギター・松本孝弘さんと、ボーカル・稲葉浩志さんの2人組で結成されました。また同時に、松本さんは作曲、稲葉さんは作詞を担当することになります。
松本さんはアマチュア時代から多少の作曲経験があり、また当時スタジオミュージシャンとしてすでにある程度のキャリアを積んでいましたが、稲葉さんは”いきなりのプロデビュー”。
アマチュア時代を含めての作詞経験もなく、そもそも、(当時洋楽中心にコピーしていたため)”ほとんど日本語で歌ったことがない”状態でデビューを迎えることになりました。

そのため稲葉さんは「作詞」に苦労。デビューから2年程は、”松本さんの曲ができても稲葉さんの詞ができていない”状況、また”歌詞を提出しても周りからダメ出しばかりされる”状況が続き、稲葉さんは後に「高尾山に逃げようかと思った」と語るほど、かなり追い詰められていました。

そんな最中、稲葉さんにある転機が訪れます。

松本さんとディレクター、渋谷の本屋に「万葉集」を買いに行く

1990年2月21日発売の3rdシングル「LADY-GO-ROUND」制作時にも、稲葉さんは作詞に行き詰っていました。

それを見た松本さんと当時のディレクターは、1990年のお正月、稲葉さんを慰めに行かれたそうです。そしてさらに、渋谷の本屋さんに赴き、稲葉さんのために「万葉集」を購入。

このことによって、稲葉さんは作詞のヒントを得ることができ、3rdシングル「LADY-GO-ROUND」の歌詞を無事完成させたのです。
「LADY-GO-ROUND」の歌詞には、百人一首の一節が取り入れられています。

こひしかるべき わがなみだかな

こひしかるべき かみのまにまに

B’z「LADY-GO-ROUND」

稲葉さん、この年に「太陽のKomachi Angel」を書き上げるなどし、覚醒

さらにこの年、B’zは6月13日に発売した5thシングル「太陽のKomachi Angel」で初のオリコンチャート1位を獲得。ついに大きな飛躍を見せ、音楽シーンの第一線に躍り出ることとなりました。

それは「LADY-GO-ROUND」リリースからわずか約4ヶ月後の出来事でした。
以降、稲葉さんの作詞はスムーズに進むようになり、また世間から圧倒的な支持を受けるようになったことは言うまでもありません。

さて、この「太陽のKomachi Angel」というタイトルについて、皆さんはどのように感じられるでしょうか?
(リリースから29年を経た現在から見たら多少板についた感もありますが)やはり一般的に考えて、通常の感覚では到底考えられないタイトルですよね。

松本さんご自身も、このタイトルを最初に見たとき非常に驚かれたそうです。
そして同時に、それ以降にどのようなタイトルがついても驚かれなくなったとも後に語られています。
今改めて振り返ってみると、「ギリギリchop」、「ultra soul」、「愛のバクダン」など、画期的なタイトル・歌詞の楽曲は、結果的にB’zを代表する楽曲となっており、また今やB’zに欠かせない存在でもありますよね。

この転機を迎えた1990年以降、B’zが現在に至るまでにこれらの楽曲をリリースすることで、圧倒的な結果を出し続けてきたことは、皆さんがよくご存じの通りです。

つまりこれらの話をまとめると、松本さんとディレクターが「万葉集」を買い、稲葉さんが3rdシングル「LADY-GO-ROUND」に和歌の一節を取り入れたことが、稲葉さんの作詞の壁を破る大きなきっかけとなり、後の稲葉さん、そしてB’zの大躍進に繋がったということができるのです。

大げさに言えば、「万葉集」が現在のB’zを形成しているとも言えるのかもしれません。
そのような観点から見ると、『B’zと万葉集』には大きな関係があるのです。

万葉集と稲葉さんの小市民的歌詞

さて、”B’zはなぜ売れたのか”というテーマの評論を様々なところで拝見していると、”稲葉さんの歌詞”が要因に挙げられていることが多々あります。
そして稲葉さんは、かつて雑誌の対談で、”ロックの様なダイナミックなサウンドに、自分の小市民的な言葉が乗ったから新鮮だったのではないか”という「自己分析」をされていらっしゃいました。

確かに、稲葉さんの歌詞は着飾ることなく、”等身大のもの”であることが多いですよね。

「ミュージシャンであること」は、ある意味においては「華やかであること」です。
ましてやロックという音楽ジャンルにおいては反骨精神やあらゆる刺激的要素が前面に押し出されることが多いため、世の中に向けてどこか「高圧的な姿勢」を(パフォーマンスであるとしてもないとしても)見せなければならないことも多いでしょう。

しかし稲葉さんの歌詞にはそのような要素はほとんど見られません。
どこまでも華美な、余分な要素を排除し、独自のスタイルで”小市民的な言葉”を紡いできた、稀有な作詞家、それこそが稲葉さんであるということができると思います。

一方「万葉集」もまた、着飾ることなく、等身大であり、”小市民的な”歌集です。

派手な技巧はあまり用いられず、素朴で率直な歌いぶりに特徴があるといいます。

『稲葉さんの歌詞と万葉集』には、そのような似た側面があると言えるのではないでしょうか。

そしてさらに、筆者自身が思ったことがあります。それは、実は稲葉さんは、前述の「LADY-GO-ROUND」制作時に、単純に和歌を歌詞に取り入れることで作詞の常識を破っただけでなく、万葉集を読んだことにより「ありのままに書くこと」の美しさを感じられ、それによって以降の歌詞のスタイルが少なからず影響を受けたのではないか、ということです。

この点については本人の明言を確認していないためあくまで推測となり、多少強引であると言われる方もいらっしゃるかもしれませんが、デビュー直後(つまり「万葉集」を読む前までの時期)の作品には実は”華美さか目立つ”ものも見受けられます。例えば1989年5月21日発売シングル「君の中で踊りたい」のカップリング曲「SAFETY LOVE」の一節です。

スィートルームでは 無邪気にはしゃいでるミモザ片手の 愛しい君は

B’z「SAFETY LOVE」

当時の若い感性で書かれた作品としての味ももちろんありますが、後のインタビューを紐解く限り、少なくともこの一節は稲葉さんの実体験ではなさそうです。むしろ、稲葉さんらしい等身大の歌詞のスタイルが確立された1990年以降はこのようなテイストの作品はめっきり減ったように思われます。

もちろん「歌詞」であるため、どの時代の作品においても実体験ではない内容のものは多数存在していることでしょう。しかし、改めて今考えてみると、1990年1月、稲葉さんが作詞に悩み「万葉集」を読み耽ったあたりから、「詞を書くときは着飾らなくていい」という意識が稲葉さんの中に芽生え始めた、という説が提唱できるのではないでしょうか。

いずれにしても、万葉集がB’zに与えた影響は大きいということ自体は、紛れもない事実です。

「歌を詠む」「歌詞を書く」という行為は、芸術的であり、ともすれば耽美的になり得るもの。
その中で敢えて、ありのままに詠み、書く。これがどれほど勇ましい行為で、美しさを伴ったものであるのか、計り知れません。またそのことに想いを馳せると、”詠み人”たちに滾々と尊敬の念が湧いてきてやまない気持ちになります。

最後に

今回、『B’zと万葉集』というテーマでコラムを書かせていただきました。ご覧になっていかがでしたでしょうか。
私自身今回の執筆にあたって、1000年以上の時を経てなお人の心を突き動かすことができる「万葉集」の持つ力強さには、改めて尊敬の念を抱きました。また「万葉集」、ひいては稲葉さんの作詞スタイルであるとも言える”素朴さ”が持つ素晴らしさに改めて着眼することができ、大きな喜びを感じた次第です。

さて、国民が大きな関心を集めていた今回の新元号の決定。
当日は大きなトラブルもなく、また全国的に好天に恵まれる中で、無事新元号が『令和』と発表され、喜びや安堵に包まれた国民の方々も大勢いらっしゃったのではないでしょうか。
そして5月1日からは新しい元号の時代に突入することとなります。
新しい元号の時代は、「万葉集」のように、あらゆる境遇にいる方々が、それぞれの花を咲かせられる、幸せに溢れる時代となることを、心から希求したいと思います。

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